ケイマイちゃんねる

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【書籍紹介】実は意外と合理的?「海賊の経済学」

最近読んだ面白かった本はこれ

カリブの海賊たちの行動を経済学で分析、説明するというもの。 経済学といってもGDPとか経済成長率うんぬんといったマクロ経済学ではなくて、特定の市場とかその市場の参加者の行動を分析するミクロ経済学的な考え方で”海賊”の行動を解き明かすというのがおもしろい。

経済学をやったことある人ならすんなり理解できるし、「へぇ~そんな風に分析できるのか!」と教科書では退屈だった理論も楽しく理解することができると思う。

もちろん経済学をやったことない人でも、詳しく説明されているので特に問題なく読めると思う。 もちろん数式なんか出てこない。

~「訳者あとがき」より~

本書はインセンティブプリンシパル・エージェント問題、ガバナンス問題、フリーライダー問題、 意思決定コスト、規制緩和シグナリングブランディングといった経済学の概念を非常にわかりやすく説明してくれる。

この本は2011年とちょっと前の本だけど、最近ニコ生で見た岡田斗司夫の解説がおもしろくておもしろくて、すぐにAmazonでポチってしまいました。(後々になって本棚の中からもう一冊見つかる...そういえば昔買ってたわ)

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岡田斗司夫の解説はほんとおもしろい。 YouTubeでも前半は見られるけど後半はニコニコ動画の有料チャンネル登録が必要

岡田斗司夫ことオタキングはほんと凝り性なので、本書だけではなくて、他にも海賊関連の書籍を読み漁って解説しているのでより面白いのだと思う。

オタキングが紹介している海賊に関する参考文献についてもあとでまとめたいと思う。

正直、岡田斗司夫の解説を聞いてしまうとそれ以上は蛇足なような気もするけど、自分なりにも本書についてまとめてみたいと思う。

章ごとに内容の”要約のようなモノ”とコメントをつらつらと書いていく。

それと思いあまって作ってしまった解説動画も貼ってあるのでよかったら見てほしい。

第1章 見えざるフック

もちろんアダムスミスの「見えざる神の手」をもじってるわけですね 本書で取り上げる海賊が「カリブの海賊」たちであることや経済学の基本的な前提である「合理的な行動」の前提とかについて触れています。

第2章 黒ヒゲに清き一票を 海賊民主制の経済学

「黒ヒゲ」とは、あの「パイレーツ・オブ・カリビアン」の「ジャックスパロウ」船長のモデルになった有名な海賊「エドワード・ティーチ」の通称であり、もはや海賊の代名詞である。

私たちは、海賊ときくとディズニー映画の印象を強く受けていると思う。 パイレーツオブカリビアンのジャックスパロウやピーターパンのフック船長だ。

ジャックスパロウはイカれてるし、その他の海賊は暴力的だったり、アホだったりという印象だし、フック船長なんかもなんか偉そうで独裁者的に描かれている。

でも、本当のカリブの海賊たちは実は非常に「民主的」だった。

例えば、海賊船の船長は選挙でえらばれるし、いつでも投票で解任されちゃう。 さらに、船長室なんかは他の船員が誰でも入れる共有スペースだったし、船長は船室がなくて他の船員と同じようにハンモックで寝てるのが普通だった。

しかも船長の権限は、戦闘時の指揮にほぼ限定されていて、略奪品の分配とか日々の食料の配給、それに懲罰などは「クウォーターマスター」という役職に権限が分散されていた。しかもこの役職も投票で選ぶ。

これなんかは完全に「分権制」である。

ちなみに彼ら「カリブの海賊」たちの全盛期は1700年代の初頭であって、フランス革命の半世紀も前に実は海賊船では平等で民主的な政治体制がとられていたというのが興味深い。

そして、海賊のような犯罪者集団がなぜこのような民主的な制度を採用しえたのか? ということについて経済学的な説明を試みている。

この矛盾を解くキーワードは経済学の用語「プリンシパル・エージェント問題」だ。 これについて詳しく説明すると長くなるので、それは私の動画か本書の内容で確認してほしい。

当時の海賊たちの前職は商船の船員であることが多かった。 当時の商船というのは船長が独裁者みたいなもんで、仕事の割り振り、食料の配給、そして船員への懲罰などほぼ無制限の権限が与えられていた。

これは船の所有者に代わって、船長が船員たちが不正をしたり、怠けたりしないよう監視し、指示に従わせるためだった。

だけど、このような強い権限の副産物として船長は権限を濫用することが多かったようだ。 むやみに船員に暴行したり、難癖をつけて給与を減額して私腹を肥やしたり、食料を少なくしてコストを減らしたりと、結構非道なことをしていた。 この状況は「社長がオーナー一族である超絶ブラック企業」を想像するといいかもしれない。

一方で海賊船には所有者がいなかった。 なぜならば海賊船そのものの盗んだものだったからだ。 そのため船員を見張るための船長は必要がなかった。 船員は皆、利害を共にする運命共同体だ。 「従業員全員が株主でありオーナー」という会社を想像するのがいいかもしれない。

だから強権的な船長なんて必要ないし、むしろそういった独裁的な船長に虐げられ、収奪されていた元商船の船員が多かった海賊では、できるだけ船長の権限を抑制しようとした。

でも、戦闘や逃亡には瞬時に判断ができる指揮官が絶対的に必要だ。 そこで生み出されたのが「海賊民主制」だった。

海賊たちは民主的な制度の採用により、船長の権限を抑制しつつ、船長というリーダーを作ることに成功し、海賊という「ビジネス」を効率的に遂行することができるようになったのだった。

海賊たちが「民主的な制度」を採用しえたのは、何も海賊たちが啓蒙思想を胸に抱いていたかじゃなくて、「船には所有者がいない」(よって「プリンシパル・エージェント問題」がないので船長に権限集中が必要ない)という経済的な条件によってであったというのが本章の結論である。

「盗んだ船だからむしろ民主的」という結果は、とても興味深いものがある。

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第5章

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